マイクロ法人による社会保険料節約テクニックのデメリットとは?
進み続ける少子高齢化に伴って、現役世代が負担する社会保険料の負担金額は増え続ける一方です。
所得税・住民税よりも社会保険料(健康保険・年金)の方が高いという人も少なくないでしょう。
会社員の方が給料から天引きされる健康保険料・厚生年金については、どうしようもないので対策の打ちようは無いですが、個人事業主の人は対策方法はあります。
それは「個人事業とは別に法人を設立し、そこから少額の役員報酬を自分に支給して、会社の保険に入る」という手法です。
内容の詳細は、別の記事で解説するのでここでは省略しますが、社会保険料だけで見ると、人によっては年間100万円ほど節約できる可能性もあります。
・・・しかし、この社会保険料の節約テクニックは、得した気分になっているだけで、トータルで考えると実際は損していたり、時間対効果で考えると微妙な人も少なくないと思われます。
ということで、今回はこの社会保険料の節約テクニックのデメリット面を中心に解説したいと思います。
個人/法人の売上の切り分けが難しい
個人と法人で、同じような事業を行うのは基本的にはNGです。明確な線引きが必要になります。
すでに個人で複数事業をやっている人であれば、一部を切り出してそれを法人で取り組めば良い話で、シンプルです。
問題は、単一事業で明確な線引きができない人の場合です。
こういった方が、それでもどうしてもマイクロ法人テクニックをやりたいがために、あえて何か新たな売上を考え出して、そこに時間がかかったりリスクが発生してしまうのは本末転倒かなと思いますね。
個人/法人の経費の切り分けがめんどくさい
今までは個人事業の経費として考えてきたものについて、「これは個人事業の経費なのか、それとも法人の経費にすべきなのか?」を考えるめんどくささも新たに発生してしまいます。
間違ってしまうこともあるでしょう。すでに会計ソフトに入力済みだった場合、修正するためには「個人事業の経費からは削除して、法人の方に登録しなおして・・」のような作業をする必要があり、面倒ですね。
想定以上に法人に利益が残った場合
この社会保険料の節約テクニックは、役員報酬を最低レベルで設定することが前提となっていますが、それだと法人に利益が残りすぎてしまう場合はどうするか?という問題があります。
役員報酬として吐き出す場合は、当然社会保険料が高くなるので、このテクニックの意味がなくなります。
法人に利益を残したままの場合は、余計な法人税等がかかります。そして、会社に残ったお金はプライベートで自由に使えるわけでもありません。
法人が赤字になった場合
上記とは逆に、想定以上に法人の経費がかかり、赤字になった場合はどうでしょうか?
別に赤字だからといって役員報酬の支給や会社の保険の加入がNGとなるわけではありません。
そういう意味では、社会保険料は節約されているので得をしているように見えますが、もし法人を作っていなければこの赤字は個人事業のプラスと合算できていたわけです。
つまり、所得税・住民税・個人事業税などを踏まえると、実際は損をしている可能性があります。
事業が縮小した場合
個人事業の利益が大きいときは、この社会保険料の節約テクニックは効果は大きいですが、利益が少なくなってくると効果は薄くなっていきます。
一定レベル以下になると、国民健康保険や国民年金は免除制度もあるので、逆にそっちの方が安くなる可能性もあるわけです。
新たなコスト
設立費用、会計ソフト代、税理士報酬、法人県民税・市民税の均等割、さらに人によってはバーチャルオフィス代がかかるでしょう。
設立費用は初期コストですが、それ以外は毎月・毎年かかっていく固定費です。
新たな手間
銀行、年金事務署、税務署、県税事務所、市区町村、税理士対応など、法人を作ったことにより新たにめんどうな手間が発生します。届いてくる郵便物も増えますし、営業チラシも来ます。飛び込み営業が来る可能性もあります。
ちなみに法人の預金口座開設には審査があり、その審査は年々厳しくなっています。
住所バレの可能性
法人の登記情報は誰でも知ることができる仕組みになっています。社名で検索可能です。
そして、その登記情報には代表者の氏名や住所が含まれます。
したがって、もしマイクロ法人の社名をHP等に公表する場合は、住所バレの可能性があることになります。
制度改正の可能性
例えば、事業所得など他の所得も含めて社会保険料が計算されるようになる可能性や、個人事業をやっている人は会社の社会保険には入れなくなるような制度改正が入る可能性はゼロではありません。
もしそうなったときに、会社をどうするのか?解散・清算するにしても、それはそれで手間やコストは少なからずかかります。
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