無償譲渡・低額譲渡・高額譲渡の整理(①個人⇒②個人へ)

「①個人」から「②個人」へ資産の譲渡があったときの、無償譲渡・低額譲渡・高額譲渡の論点を整理します。

無償譲渡=贈与(実際売買価格が0円)の場合

①個人(譲渡者)

・課税なし

※資産が棚卸資産の場合は、「通常販売価額のおおむね70%」に対して事業所得が課税される。【所得税法第40条第1項第1号、所得税基本通達40-2、40-3】

②個人(譲受者)

・贈与税課税(110万円の非課税枠あり)

※将来の譲渡所得の計算においては、取得価格の引き継ぎ(取得費加算の特例)の規定あり。【所得税法第60条第1項第2号】

実際売買価格が0円~適正時価の1/2未満の場合

譲渡側に「譲渡益」が発生する場合(取得価格:1,000、実際売買価格:1,500、適正時価:4,000)

①個人(譲渡者)

・(1,500-1,000)に対して譲渡所得が課税される。

※資産が棚卸資産の場合で、「1,500<通常販売価額のおおむね70%」のときは、その差額に対して事業所得が課税される。【所得税法第40条第1項第2号、所得税基本通達40-2、40-3】

②個人(譲受者)

・(4,000-1,500)に対して贈与税課税(110万円の非課税枠あり)

※取得価格は通常の考え方で1,500となる。【注1】

譲渡側に「譲渡損」が発生する場合(取得価格:1,000、実際売買価格:800、適正時価:4,000)

①個人(譲渡者)

・譲渡損失は無いものとされる。【所得税法第59条第2項】

※資産が棚卸資産の場合で、「800<通常販売価額のおおむね70%」のときは、その差額に対して事業所得が課税される。【所得税法第40条第1項第2号、所得税基本通達40-2、40-3】

②個人(譲受者)

・(4,000-800)に対して贈与税課税(110万円の非課税枠あり)

※取得価格は1,000を引き継ぐ。

実際売買価格が適正時価の1/2以上~8割程度以下の場合(取得価格:1,000、実際売買価格:2,500、適正時価:4,000)

※時価の8割程度が著しい低額の目安となる(判例より)。具体的な金額基準は定められていない。

①個人(譲渡者)

・(2,500-1,000)に対して譲渡所得が課税される。

※譲渡損失の場合は通常の考え方で、場合によっては他の所得と損益通算できる。

※資産が棚卸資産の場合で、「2,500<通常販売価額のおおむね70%」のときは、その差額に対して事業所得が課税される。【所得税法第40条第1項第2号、所得税基本通達40-2、40-3】

②個人(譲受者)

・(4,000-2,500)に対して贈与税課税【相続税法第7条】(110万円の非課税枠あり)

※取得価格は通常の考え方で2,500となる。

実際売買価格が適正時価の8割程度以上~適正時価の場合(取得価格:1,000、実際売買価格:3,500、適正時価:4,000)

①個人(譲渡者)

・(3,500-1,000)に対して譲渡所得が課税される。

※譲渡損失の場合は通常の考え方で、場合によっては他の所得と損益通算できる。

②個人(譲受者)

・課税なし

※取得価格は通常の考え方で3,500となる。

実際売買価格が適正時価を超える場合(取得価格:1,000、実際売買価格:8,000、適正時価:4,000)

※「適正時価での売買」と「個人から個人への現金贈与」を同時に行った場合と整合する。

①個人(譲渡者)

・(4,000-1,000)に対して譲渡所得が課税される。

・(8,000-4,000)に対して贈与税課税(110万円の非課税枠あり)

②個人(譲受者)

・課税なし

※取得価格は適正時価の4,000となる。

【注1】時価の1/2未満で譲渡損の出ない場合

たとえば,太郎が花子に対し,譲渡所得の起因となる資産Sを,代金20で売却した。太郎におけるSの取得費は10であり,売却時のSの時価は50である,という数値例で検討する…(中略)…

低額譲渡を受けた花子において,資産Sの取得費は,20となる。その根拠規定は60条1項2号ではなく(「前条第2項の規定に該当する譲渡」にあたらない),38条1項である。

「所得税法59条と60条の適用関係」増井良啓/税務事例研究/日本税務研究センター編 より