インボイス制度の2割特例とは?(2023年度税制改正大綱・小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置)

2022/12/16に税制改正大綱が決定・公表されました。

※「税制改正大綱」とは、法律改正のたたき台となるものです。これをベースに翌年1月の国会で法案審議され、4月から新しい税制が施行される流れとなります。

この税制改正大綱の中ではインボイス制度に関わる部分もあり、特に影響が大きいと思われるのはいわゆる「2割特例」と「少額特例」です。

今回の記事では、このうち「2割特例」について解説します。

2割特例とは?

2割特例とは、簡単に説明すると「インボイス制度のせいで仕方なく消費税課税事業者になる人は、預かった消費税の2割を納税すればそれでOKとしますよ。」という制度です。

※計算結果としては、簡易課税みなし仕入率80%で計算する場合と全く同じになると思われます。

税制改正大綱では「適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置」という見出しで説明されていますが、長いのでこの記事では「2割特例」とします。

消費税の納税額はどうなる?

具体例として、年商550万円のフリーランスのライター経費は一切発生していないと仮定)を想定してみると…

預かっている消費税は550万円÷1.1=50万円なので、インボイス制度に伴って消費税課税事業者になり何も考えずに消費税申告すると、この預かった50万円をそのまま納税することになります。非常に大きな負担となりますね。

このような人への緩和措置として、従来から「簡易課税」という消費税の申告方式がありました。

ライターのみなし仕入率は通常50%となりますので、簡易課税を適用すれば50万円のうち50%=25万円を預かった消費税から控除することができ、納税する金額は50万円ー25万円=25万円で済むことになります。かなり緩和されましたね。

ただ、これでもインボイス制度導入への反対意見は強く、簡易課税とはいってもある程度の専門知識は必要ということで、配慮の結果考えられた特例がこの「2割特例」です。

この特例を適用すれば、納税額はシンプルに50万円×20%=10万円で済むことになります。さらに緩和されることになりました。

(逆に考えると、「ここまで配慮するのだから何としてもインボイス制度を導入させる、これ以上の延期は絶対にしない」という政府の強い意志が感じられます。)

対象者は?

この特例の対象者は「インボイス発行事業者の登録をしなければ、課税事業者にならなかった者」というのが基本的な考え方です。

例えば2年前の売上が1,000万円を超えている人は、インボイス発行事業者にならなくても消費税の課税事業者となってしまいますね。このような人は2割特例の対象とはなりません。

具体的に、例えば「2021年の売上が1,000万円を超えたが、2022年は1,000万円以下となった人」を考えてみると・・

  • 2023年の消費税申告は、10月からインボイス制度は始まっておりインボイス登録もしたが、インボイス制度関係無しに消費税申告義務がある年(2年前の売上が1,000万円超)なので、2割特例は受けられない
  • 2024年の消費税申告は、2年前は売上が1,000万円以下なのに、インボイス制度のせいで消費税申告義務がある年なので、2割特例を受けることができる。 ※インボイス発行事業者の登録取り消しを求める届出書を前もって出すことで、免税事業者に戻ることもできます。

という結論になります。

※追記:以下は2023/4/14に更新されたインボイス制度QAの内容です。インボイス制度開始前から課税事業者だった人でも、2年前の売上が1,000万円以下になれば2割特例を受けられることが説明されています。

(注) 課税事業者が適格請求書発行事業者となった場合であっても、当該適格請求書発行事業者となった課税期間の翌課税期間以後の課税期間について、基準期間の課税売上高が1千万円以下である場合には、原則として、2割特例の適用を受けることができます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf
問 111 適格請求書等保存方式の開始後一定期間は、適格請求書発行事業者の登録により課税事業者となった免税事業者については、消費税の申告について簡易に計算できる経過措置(2割特例)があるそうですが、その内容について教えてください。【令和5年4月追加】

特例を適用できる期間は?

2割特例と適用できる期間は、「2023年10月~2026年9月が含まれる課税期間です。

個人事業主で考えると、最初の「2023年10月~12月の3か月分」の申告と、その後3年分、合計4回この特例を受けることができます。

※なお『日本税理士会連合会』という団体は、「免税事業者からの課税仕入れ80%控除という経過措置について、当分の間維持すること」を求めています。2割特例は、この経過措置とオモテウラの関係です。つまり、『日本税理士会連合会』の要望のとおり80%控除の経過措置が3年を超えて延長されるのであれば、この2割特例の適用可能期間も延長されることが予想されます。

適用するための手続きは?(簡易課税適用中の人はどうなる?)

2割特例を適用するために、特に事前の申請などは不要です。

消費税の申告書に、「2割特例を適用している」旨を付記すればそれだけで適用できるような方式を予定しているようです。

そして、簡易課税の適用の有無に関係なく、この特例は適用できることが想定されています

簡易課税/原則課税に関係なく、後出しジャンケン的に有利選択ができるわけですね。

みなし仕入率90%の事業を少なからず行っている人は、簡易課税を適用した方が有利な可能性もあるので、そういう人は両方のやり方で計算した上で納税額が少ない方で申告することもできるわけです。

また、簡易課税を適用しておらず原則課税を適用している人は、多額の設備投資を行った場合などはむしろ消費税還付になる可能性もあるので、そういう人は2割特例を適用しない方が当然有利になりますね。

※なお「簡易課税適用中の場合は原則課税は選択できない」というのは今まで通りなので、「従来より簡易課税を適用中で、簡易課税よりは2割特例の方が有利なのは明らかだが、突発的な設備投資をして2割特例よりも原則課税の方が有利になるかもしれない」という人は簡易課税を取りやめしておくというのは選択肢としてあるかもしれません。レアケースだとは思いますが。。

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