所得税法の「みなし」規程【自家消費・無償譲渡・低額譲渡】
所得税法の各種みなし規定を整理します。
無償譲渡・低額譲渡<棚卸資産以外の資産の場合>
次は棚卸資産以外の資産の場合の【無償譲渡】と【低額譲渡】です。
次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。) ⇒【無償譲渡】
二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。) ⇒【低額譲渡】
【所得税法第59条第1項第1項、第2項】
『低額』かどうかの判断基準については、以下のように規定されています。
「売買価格<適正時価の50%」を満たす場合【所得税法施行令第169条】
これらの【無償譲渡】または【低額譲渡】が行われた場合の、譲渡所得の収入金額とすべき金額は、以下のように規定されています。
適正時価【所得税法第59条第1項】
基本的には「個人」⇒「法人」への譲渡のときに、この論点が生じることに注意が必要ですね。
無償譲渡・低額譲渡<棚卸資産の場合>
まずは棚卸資産の場合の【無償譲渡】と【低額譲渡】からです。
次の各号に掲げる事由により居住者の有するたな卸資産(事業所得の基因となる山林その他たな卸資産に準ずる資産として政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)の移転があつた場合には、当該各号に掲げる金額に相当する金額は、その者のその事由が生じた日の属する年分の事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。
一 贈与(相続人に対する贈与で被相続人である贈与者の死亡により効力を生ずるものを除く。)又は遺贈(包括遺贈及び相続人に対する特定遺贈を除く。) 当該贈与又は遺贈の時におけるそのたな卸資産の価額 ⇒【無償譲渡】
二 著しく低い価額の対価による譲渡 当該対価の額と当該譲渡の時におけるそのたな卸資産の価額との差額のうち実質的に贈与をしたと認められる金額 ⇒【低額譲渡】
【所得税法第40条第1項第1項、第2項】
『低額』かどうかの判断基準については、以下のように規定されています。
「売買価格<通常販売価額のおおむね70%」を満たす場合【所得税基本通達40-2】
この【低額譲渡】が行われた場合の、事業所得の総収入金額に含めるべき金額は、以下のように規定されています。
売買価格と「通常販売価額のおおむね70%」との差額でOK【所得税基本通達40-3】
【無償譲渡】の場合の事業所得の総収入金額に含めるべき金額は、以下のように規定されています。
「通常販売価額のおおむね70%」でOK【所得税基本通達39-2】
棚卸資産の場合のこの論点は、「個人」⇒「法人」のときだけではなく、「個人」⇒「個人」 のときにも生じる点に注意が必要です。
自家消費
最後に【自家消費】の規定です。
居住者がたな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)を家事のために消費した場合又は山林を伐採して家事のために消費した場合には、その消費した時におけるこれらの資産の価額に相当する金額は、その者のその消費した日の属する年分の事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。
【所得税法第39条】
【自家消費】の場合の事業所得の総収入金額に含めるべき金額は、【無償譲渡】の場合と同じで以下のように規定されています。
「通常販売価額のおおむね70%」でOK【所得税基本通達39-2】
個人事業主が廃業する場合に、廃業時の棚卸資産を家事用とするときには自家消費として収入に計上する必要があるので注意が必要でしょう。
(例えば食品小売店が廃業する場合など。一方、製造業が廃業するときの棚卸資産など自家消費せず廃棄する場合は、もちろん収入金額には含めなくてOKです。)
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