役員賞与の設定による社会保険料の節約とは?
多くの経営者は、「節税」と同様に「社会保険料の節約」にも興味があるのではないかと思います。
一つの策として、役員賞与を設定することによる節約テクニックがあるのですが、この方法はリスクも少なくないため、メリットのみでなくデメリットも合わせて、今回解説したいと思います。
また、オマケ的に給与の設定方法のコツにも触れたいと思います。
なぜ賞与を支給することで社会保険が減るのか?
社会保険料は、給料(月給)だけではなく賞与にもかかってきます。料率もほぼ同じです。
それなのに、なぜ賞与を支給することで社会保険が減るのかというと、上限の考え方が月給と賞与で異なるからです。
月給の場合は、63.5万円が厚生年金の上限、135.5万円が健康保険料の上限となります。月給がこれらの上限を超えても保険料はもう上がりません。
賞与の場合は150万円(ひと月)が厚生年金の上限、573万円(年間)が健康保険の上限となります。
・・・つまりどういうことかというと、月給60万円×12か月=年収720万円の場合は特に上限にはかからないわけですが…
上限突破するために月給10万円×12か月=120万円で極端に低く抑えて、その代わりにプラス賞与(1回)で600万円とすることにより、トータルは年収720万円で変わらないものの賞与は上限突破することができます。
この場合、シンプルに健康保険料率12%、厚生年金料率を18%と仮定すると、、
厚生年金の節約額:(600万円-150万円)×18%=81万円
健康保険の節約額:(600万円-573万円)×12%=3万円
⇒月給60万円×12か月の場合と比べ、年間84万円もの節約になるのです。(理論的には。)
リスク①高額すぎる賞与が認められない可能性
上記メリットがあるわけですが、まず1つ目のリスクとして、高額すぎる賞与が税務上認められない可能性があります。
何をもって「高額すぎる」と判断するのは難しいところですが、同業他社の相場や社会一般に通用している常識から考えることになると思われます。
リスク②会社からプライベート出金が多くなる可能性
この社会保険料節約方法をとる場合、年収に比べて月給が極端に低いことになります。
社長の普段の生活が月給では間に合わず、会社の口座からプライベート出金することが頻繁になる可能性はかなり高いでしょう。
例えば毎月20万円、給与とは別途引き出すことが通常となっているなど。
このような場合は、「賞与支給が通常の月給支給の穴埋めとして行われる実態」があるとして、低く届け出ている月給が認められないことになります。
※厚生労働省「年管管発0918第5号 「健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて」の一部改正について」
リスク③業績不振時に極端な判断しかできなくなるリスク
役員賞与の場合は、例えば600万円を設定しておきながら、それより低い金額を支給するというのは認められません。
つまり、予定外の業績不振などにより、賞与600万円を支給したら大幅な赤字になってしまう状況になってしまったら・・?
①支給する場合⇒大幅赤字の決算となってしまい、一方で所得税・住民税は高くついてしまう…
②支給しない場合⇒プライベートの生活が困難になってしまう…
という二択を迫られることになるのです。現実的な賞与額を設定していたら、もっと柔軟な判断ができていたかもしれません。
リスク④突発的な役員退任があった場合のリスク
何らかの事情(健康上の問題など)で、社長がすぐに役員退任しなければならない事態もあり得ることです。
役員退職金の計算方法として一般的なのが「功績倍率法」という方法なのですが、その計算式は以下となっています。
役員退職金の適正額 = 最終役員報酬月額 × 役員在任期間 × 功績倍率
・・・つまり、月給を低めに設定していると、退職金として支給できる適正額も低くなってしまうことです。
(おまけ)月給設定のコツ
役員賞与とは全く別の余談ですが…
毎月の社会保険料は「標準報酬」に料率を掛けた金額で決定され、「標準報酬」のランクは階段状になっています。
例えば、月給122,000円以上~130,000円未満の範囲の人は、標準報酬月額は126,000円となり、保険料はみんな同じです。
122,000円、130,000円など、一定の金額以上になったら保険料が段階的に増える仕組みになっているわけですね。
・・・つまりどういうことかと言うと、給料を13万円にしたいのであれば、129,000円などにした方が標準報酬月額のランクが下がるので、若干トクだということです。
セコいテクニックではありますが、この場合8万円×30%=2,400円くらい毎月安くなり、年間3万円程度にもなるので、頭に入れておいて損はないと思われます。
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