【過大役員給与】不相当に高額な金額とは?親族への支給

前回の記事「役員報酬(実質基準)の『相当な金額』とは何か」の続きです。

まず問題になりやすいのは、代表者の親族(配偶者・子ども・親など)に対して役員報酬を支給している場合です。

赤の他人に対してはそもそも稼働に見合わない報酬を支払おうという動機が付きづらいのに対して、親族はそうではないからですね。

当然税務調査でも厳しく見られやすいわけで、そのため争いが裁判にまで発展するケースもあります。

今回の記事では特に代表者の親族に対する支給に関して争われた裁判例を見ていくことで、「相当な金額」とは何か、理解を深めたいと思います。

代表者自身に対する支給金額の「相当な金額」については、別の記事にします。

年額60万円が妥当とされた事例(昭和53年11月30日判決)

不相当対象者の会社との関係性代表者の長女(18歳の大学生)
実際の支給額年間93万円
相当な金額年額60万円
相当な金額の算出方法他に非常勤役員が2名(月額5万円と2万円)、従業員が1名(最高で月額3万円)おり、それを前提にして、「高く見ても月額5万円の役員以上には出ないものというべき」として算出。
月額5万円の役員レベルを相当とする根拠・知識
・経験
・取締役として就任間もない事実
・勤務状況
・職務内容
・会社経営に参画する程度と、他の取締役・使用人に対する報酬・給与の額とのバランス

年額122万円、116万円、180万円が妥当とされた事例(平成9年9月29日裁決)

不相当対象者の会社との関係性代表者の妻、取締役の妻(合計3名)
実際の支給額H4.7期:年額326~714万円
H5.7期:年額656~934万円
H6.7期:年額686~954万円
相当な金額H4.7期:年額122万円(3名とも同額)
H5.7期:年額116万円(3名とも同額)
H6.7期:年額180万円(3名とも同額)
相当な金額の算出方法当該企業の類似法人でこの3名と職務内容が類似すると認められる非常勤の取締役に対する役員報酬の平均額
非常勤取締役レベルを相当とする根拠妻1:夫が入院した平成6年4月頃までは全く出社したことがなく、入院してから時々出社している程度。
妻2:取締役としての業務分担はなく、夫が個人で営む衣料品店の事業専従者として、専らその仕事に従事している。
妻3:会社の職務を遂行した事実はない。

裁決の詳細

詳細内容は国税不服審判所HPに載っています。https://www.kfs.go.jp/service/JP/54/16/index.html

年額118万円、186万円が妥当とされた事例(平成17年12月19日裁決)

不相当対象者の会社との関係性代表者の母
実際の支給額H15.1月期:年間3,300万円
H16.1月期:年間3,600万円
相当な金額H15.1月期:年間118万円
H16.1月期:年間186万円
相当な金額の算出方法当該会社と業種・事業規模などが類似し当該企業の所在する地域の非常勤取締役が存在する法人をピックアップし、ピックアップした会社の非常勤取締役に支給された年間報酬額の平均額
非常勤取締役レベルを相当とする根拠・職務の内容は、従業員からの悩み事相談相手になることや、退職社員に対する貸付金回収程度で、特に決まった仕事はない。
・出勤日時や仕事内容を明らかにする書類は作成されておらず、事務室内に机もなく、出社時は空いた机を適当に使っている。
・職務内容に関する具体的な資料を提出せず、審判所に対して職務内容や勤務状況を明らかにしていない。

62万円(4か月)、年額188万円、197万円が妥当とされた事例(平成20年11月14日裁決)

不相当対象者の会社との関係性代表者の妻
実際の支給額明らかにされていない
相当な金額H16.5期:4か月で62万円
H17.5期:年額188万円
H18.5期:年額197万円
相当な金額の算出方法同種の事業を営み事業規模も同程度の類似法人から職務内容の類似する役員報酬の額の支給事例を抽出した上、抽出された類似法人の役員報酬の額の平均値
非常勤取締役レベルを相当とする根拠・経営方針の決定、○○の製造販売、資金繰り等の重要事項には従事していない。
・外部(関連法人)に委託した業務を担当することはない。(他の役員が担当している。)
・月のうち、接待等の従事日数は僅少であり、事務所への出社日数もわずかで、その多くの日数は家事や子供の世話に費やされている。

裁決の詳細

詳細内容は国税不服審判所HPに載っています。https://www.kfs.go.jp/service/JP/76/19/index.html

年額801万円、1,087万円、600万円が妥当とされた事例(平成15年9月26日判決)

不相当対象者の会社との関係性理事長(医療法人)の次男
実際の支給額H9.3期:年額2,040万円
H10.3期:年額3,040万円
H11.3期:年額3,240万円
相当な金額H9.3期:年額801万円
H10.3期:年額1,087万円
H11.3期:年額600万円
相当な金額の算出方法類似法人の非常勤理事報酬が年額600万円(3期とも同額)」+「非常勤の医師としての報酬(宿直業務&外来診察業務に従事した分)」
非常勤医師レベルを相当とする根拠H6.6~H10.3までは別のA医療法人(病院)に常勤しており、H10.4~H11.3までは別のB医療法人(病院)に常勤していたため。

まとめ

  • 非常勤レベルと判断される要素としては、「出社の事実、勤務時間、勤務場所、仕事をしたことの根拠書類などの客観的な証拠」の有無、または「他で働いていないか」といったポイントがあり、裁判官・審判官はこれらを総合評価して最終判断する。
  • 客観的な証拠がほとんど無いような状況でも、勤務実態ゼロ(=役員報酬が一切認められない)と認定されるケースは少ない
  • 非常勤レベルと判断された後の適正な金額については、類似法人で類似職務内容の人の平均値を採用することが多く、「その人が会社に貢献している利益を個別評価して妥当な金額を決定する」といった判断を裁判官・審判官がすることはない
  • 適正金額のラインについては、他の役員や従業員とのバランスも考慮される。(親族だけ不合理に高くないか?)

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