事業所得と雑所得の区分(その2)

前回の記事では、架空の事業で赤字を作り出して、給料所得と損益通算することにより税金逃れする手法を説明しました。

ここで重要なのは、「事業所得」とは一体何なのかということ。その定義は以下のとおりです。

【所得税法第27条(事業所得)】
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。

「政令で定めるもの」とは・・・?それは以下のように定められています。

【所得税法施行令第63条(事業の範囲)】
法第二十七条第一項 (事業所得)に規定する政令で定める事業は、次に掲げる事業(不動産の貸付業又は船舶若しくは航空機の貸付業に該当するものを除く。)とする。
一  農業
二  林業及び狩猟業
三  漁業及び水産養殖業
四  鉱業(土石採取業を含む。)
五  建設業
六  製造業
七  卸売業及び小売業(飲食店業及び料理店業を含む。)
八  金融業及び保険業
九  不動産業
十  運輸通信業(倉庫業を含む。)
十一  医療保健業、著述業その他のサービス業
十二  前各号に掲げるもののほか、対価を得て継続的に行なう事業

つまり、事業所得とは、結局は最後の方で「対価を得て継続的に行なう事業」と包括的に定められているのです。
端的に言うと、具体的・客観的な定義は法律には記載されていないということ。

こんな曖昧な状態なので、事業所得は特に雑所得との所得区分を巡って裁判で争われることも少なからずあり、裁判においては概ね以下のような要素を考慮して判断されることが多いです。

① 営利性・有償性の有無
② 継続性・反覆性の有無
③ 取引の種類
④ 取引における自己の役割
⑤ 取引の為の人的・物的設備の有無
⑥ 資金の調達方法
⑦ 取引に費やした精神的、肉体的労力の程度
⑧ その者の職業・社会的地位

これらの要素は、大阪地裁判決昭和46年2月6日で示されたもの。
最高裁判決昭和53年10月31日もこの判断を支持しており、現代においても、これらの要素をベースに判断されることが多いです。

で、これらの要素を挙げたのはいいとして、何がどうなれば事業所得で、どうなれば雑所得なのか・・・?
⇒これらを「総合勘案」して所得区分を判断するとされています。

この「総合勘案」とは、いったいどういうことなのでしょうか・・・?
次回に続きます。

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